スタッフの結婚②

進化系披露宴
悦子の披露宴は、コロナ禍の自粛ムードからはじけ飛んだような披露宴だった。
これまで我慢していた何かを吹き飛ばす明るさと、3年間で学べたことを凝縮していた。

招待客は80名くらいだっただろうか。いつものように私は悦子の上司として挨拶を頼まれた。
「普通じゃない挨拶が良さそうですよ。」
「聞いてるとホントに普通じゃなさそうなんです。」
「司会がオンラインで配信するらしいんです。」
招待されているスタッフが口々に助言してくれた。

それならば・・・。

新郎側の上司と漫才っぽくコラボ挨拶にした。
打ち合わせはオンライン。幸い、お相手側の上司もノリがいい方ですぐに掛け合い漫才が出来上がった。M1に使われるBGMで2人が登場し、披露宴の最初から普通とは違うはじけた雰囲気のはじまりになった。
友人代表はミュージカル形式、余興は互いの病院の紹介ビデオから始まるプロ並みの出来上がりだった。

新郎新婦のお色直しは早変わり、舞台の後ろに消えたかと思ったら瞬時に出てきた。悦子は白のウエディングドレスからブルーのカクテルドレス。ヘアスタイルも全然違うし、メイクも雰囲気が違う。
これまで見てきた悦子とは違う、一番輝いていた綺麗な悦子だった。

ケーキはご察しのとおりカップラーメン、キャンドルサービスはテーブルを回るのではなく一斉に点くタイプだった。

エンタメ追及の披露宴
3年間で、これまでの形式ばった披露宴から「いかに楽しませるか」をテーマにしたような披露宴、これまで自分も含め数十回の披露宴を見てきたが、これほど楽しめた披露宴は初めてだった。

披露宴はライブ中継され、新郎新婦の祖父母、親戚や来れなかった人が配信を視聴でき、スパチャは全額某事業団体へ寄付された。
なんとライブ中継担当兼司会はうちの病院のスタッフ。若者の発想に感心し、日本の将来に期待が持てた披露宴だった。

「こんな凄い披露宴見たら、次の人ハードル上がるわ。」
陽子が呟いた。
「まさか陽子さん、結婚とか?」
「いや例えばの話ですよ。私なら日本酒好きをどう表現しようかな・・って。」

結婚式も披露宴も新婚旅行も自粛してきた3年間は大きなバネになった。
過去の常識は今の非常識。
いつもの披露宴帰りの心地よさとは違う充実感で満たされた。  MIKO

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