ホームシック新人2022②

ブルー君のホームシック

どの業界でも同じだと思うが5月のゴールデンウイーク明けは怖い。

新人の中で数人は体調不良者が出るからだ。

体調不良、主にメンタル面。

ブルー君の異変に気付いたのはゴールデンウイーク明け、朝の申し送りの時のうつろな表情だった。患者さんの名前間違いや日付間違いも数回続いた。

ブルー君は看護師になって親元を離れひとり暮らしをしている。決して通えない距離ではないが、自立心を付けるためにブルー君が希望したらしい。

ブルー君の母親も看護師。夫を早くに病気で亡くし、女手ひとつで兄弟2人を育てた。

子供を自立させ、晴れてこれから自分のために生きてゆける。

それは他人の勝手な意見かもしれない。

子離れが難しい年代

男性看護師の先輩たかしくんは

「ブルー君のお母さんが子離れ出来ず淋しがっているのではないか」

と推測した。

入職後1カ月面談の日、それとなくブルー君に聞いてみた。

「どう?少しは職場と生活環境に慣れた?」

「まあまあって感じっす。」

妙に敬語を使わないのも最近の若い子の特徴だ。

「ひとり暮らし大変じゃない?ごはん食べてる?」

「十分すぎるくらい食べてます、ってか母親が毎日持って来るんすよ。」

「ごはんを?」
「夕ご飯と翌日の朝ごはんを、夕方6時半に毎日。」

「お母さん心配なのね。ちゃんと食べれてるか。」

「もういらないからって言ったら泣いちゃって。」

急にひとりになったお母さんは淋しくて仕方がないのだろう。

自分のことに置き換えてお母さんの気持ちがよくわかる。

ひとり暮らしをやめて同居してほしい、その方が貯金もできるはずだとお母さんが望んでいるらしい。

「それで最近元気がなかったのね。」

「申し訳ないっす、私情持ち込んで。」

「お母さんの気持ちもわかってあげてね。」

もはや親の心境だ。

「食事わざわざ持って来なくてもいいからって。俺もひとり暮らしは心細いんで食べに行く事にしたんす。」

ブルー君も親思いだわ。

「お母さん、おいくつ?」

「もう43なんすよ。」

ん?43?

私より若いの?

もう43?って言うの?

面談を終えたあと軽い眩暈がした。  MIKO

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