救えなかった命
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)とは、死の危険やその場に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なく映像化され思い出されたり、夢に見たりすることが続き不安や緊張が高まる心理的な症状だ。
その場面をフラッシュバックのように思い出し、急に泣いたり業務が出来なくなる。
PTSDは一般の人のみではなく、医療者にも普通に起こる。
救いたい命に向き合い医学的に限界を感じても、キセキを信じ神に祈るしかない。
最大限の医療を施しても身体機能の存続が不可能な場合は当然ある。
心電図上で波形が出ていても自発ではない。
身体機能が限界に達し、魂が宿れる状態ではない意味を指す。
死亡確認
心電図がフラット(ゼロの意味)を家族と確認する。
頸動脈の触知、呼吸停止を確認、瞳孔散大と反応無しを確認する。
医師と看護師はひと息付き 家族に向きなおす。
「〇日〇日 〇時〇分 ご臨終です。」
家族側に向き頭を下げる。
この瞬間ほど辛いものはない。
ひと昔前は
「立ち会う看護師は泣いてはいけない。」
と厳しく注意されたものだが、私は「自分の素直な感情は我慢する必要はない」と指導している。
家族がご遺体にすがり泣き崩れ、看護師はそのはかり知れない哀しみを共感する。
何度経験しても辛く言葉にできない場面だ。
死亡確認した医師は「死亡診断書」を作成する。
「死亡診断書」と「死体検案書」は同じ届出用紙で、外因死や不審死以外は「死体検案書」という文言に二重線を引き、診断書を詳細に記入する。国の死亡統計の資料になるため詳しく丁寧に記入しなければならない。
PTSD
共感が強すぎてPTSDになる看護師も少なくない。
それは経験値ではない。
経験後すぐに発症するケースもあれば数か月後に発症するケースもある。
多くの場合「なぜ救えなかったのか」「何ができたか」「無力だった」を自問する。
デスカンファレンス(死亡事例カンファレンス)や面談を通して、乗り越えるサポートをしなくてはならない。
時間薬よりも、人として経験を活かして成長してほしい。
ひとつの命に向き合う医療者として成長するために。 MIKO
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