病院内の店舗
病院の喫茶店やレストランは病院自体が経営しているわけではなく、委託業者がほとんどだ。
場所を提供している所謂テナント。
新型コロナの影響は病院の店舗にも及んだ。大手有名ファーストフード店のテナントさえ休業や撤退を余儀なくされた。
見舞客や職員を支えるレストラン
病院によっては社員食堂と一般用レストランと分けているところもあるが、うちは一緒だった。
レストランに入ると食券販売機が2台並んでいる。
定食の食券は職員は事前に割引価格で購入できた。
11時から14時30分までが昼食時間で、14時30分から17時までがティータイム、17時から20時までが夕食時間。
昼食時にはレストラン入口で左右に分けられ、右は一般用、左が職員用だ。
ティータイムと夕食の時間は左右の仕切りはない。
患者さんと見舞客がお茶をする。
話が長くなって、看護師から捜索されている患者さんもいた。
病棟の談話室より話がはずむ。
レストランを出て見舞客を患者さんが玄関先で見送り、手を振っている姿を何度見かけただろう。
少しレトロな藤のパーテーションやポトスの鉢が、無機質な病院のイメージを柔らかくしていた。
撤退するレストラン
面会禁止になり一般客のレストラン使用がなくなった。
ティータイム 利用客はゼロだ。
感染拡大防止策として夕食の提供がなくなった。
酒を提供しているわけじゃないのに。
利用客はこれまでの半分以下になり、20年続いたレストランの業者は撤退することになった。
職員の利用も1人づつの利用の制限だったり、対面禁止になったり、アクリル板があったりで不自由が多くかなり減っていた。
院内メールでレストラン撤退のお知らせがきたのは去年の11月だった。
「2022年1月10日で閉店となりました。長らくのご愛顧ありがとうございました。」
最後の日
「委託業者が撤退するだけでいずれまた再開する。」と病院側はドライだった。
委託業者が持ち込んだ大きな鍋やフライパン類が毎日病院から運ばれていく。
レストランで働く人たちの名前を職員は知らない。
「おじちゃん、おばちゃん」で心が通い合った。
この2年は4、5人くらいでレストランを切り盛りしていた。
3年前に新しく入った若手調理人も辞めて就活するらしい。
最後の日、レストランのおじちゃんたちが手に持てるだけの荷物を持って、迎えの車を待っていた。
若手調理人は別として、再就職ができるかどうか不安になる年代だ。
車を待つ間何を話していたんだろう。
病院に向かって深々と一礼しおじちゃんたちは去っていった。 MIKO
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