CEリュウ
臨床工学技士は少し前まではME(Medical Engineer)と呼ばれていた。今はCE( Clinical Engineering)もしくはCET( Clinical Engineering Technologist) と、より専門性を持った総称に変化している。
CEは医師の指示のもと、院内にある医療機器全般、例えば血液浄化装置や人工呼吸器、人工心肺装置などの生命維持装置を操作したり、安全に正しく使用できるように保守点検や職員対象に研修をおこなったりする部署だ。
CEのリュウは院内の誰からも「リュウさん」と呼ばれる入職15年目の数字・機器オタクだ。
一見生活感がない独身に見えるが、バツイチで2年前に同じバツイチの検査技師と再婚した。
リュウはある人気韓流俳優に似ていると院内でも評判だ。
リュウの計算の速さには驚かされる。
例えば搬送時にマスク3Lで酸素ボンベを使っている患者に、今使用している酸素ボンベがあと何分持つか・・だが、ある一定の計算をすれば誰もが算出できる。リュウはそれを数秒で算出する。計算が苦手な看護師は「リュウに聞く方が早い。」と毎回丸投げだ。
リュウは主にICU(集中治療室)の人工呼吸器管理やRSTという呼吸サポートチームのリーダー的存在を担っている。医師の力が大きい医療業界で、リュウのようにCEが意見を言えるチームは珍しい。時々医師の方針と真逆の呼吸器設定を理路整然と提案し、医師を唸らせる時もある。一度呼吸器内科医師と真っ向から対立し、
「リュウさんの意見とおりに呼吸器設定してみますから!」
と声を荒げた女医がいた。
結果は
リュウの言うとおりの設定後、患者はあれよあれよと良い成果を出した。
その女医は「たまたま」と陰で言っていたが、「たまたま」ではないことはその女医が一番わかっていたと思う。
研修上手なリュウ
看護師は最も苦手とする医療行為のひとつに、医療機器の取り扱い方法がある。輸液ポンプひとつ取っても、輸液ルートの選択から設定、アラーム処理、トラブルシューティングについて取得しておく知識が多々ある。看護師は意外と機器や数字に弱い。
数学が必須に思える看護師だが、電卓や略式の輸液滴下計算機を手放せない子は多い。最新型が次々と出てくる医療機器についていけず、自信を失うこともある。
リュウはそんな看護師のサポートをしようと、毎月2回同じ内容で、医療機器の取り扱い研修を実施している。入職5年目から継続しているから10年目になる。毎月2回、計240回以上実施していることになる。
その研修内容が実にわかりやすいと評判だ。シリンジポンプのフリーフローや、プライミングの必要性に関しても理論を交えながら実技中心でおこなっている。毎月2回、1回4時間の研修を少人数制で開催し続ける姿が、CEリュウが一目置かれる存在である最大の理由だ。
研修を終えた看護師たちが
「ソジュン様の説明が・・」と頬を染めて話している場面に遭遇したことがある。
その韓流俳優が演じる役ごとに、リュウはヘアスタイルをなんとなく似せている。
リュウも機器だけに興味があるわけじゃないんだ、良かった。 MIKO
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