退職に悩まされる12月

ICU看護師の退職
8月と12月は看護師の退職ラッシュだ。
常勤看護師は賞与をもらったタイミングで退職を切り出し、有休休暇を消化して退職する。
どの業界も同じかもしれないが、万年マンパワー不足の医療業界ではこの時期が一番辛い。

管理職の業務は職種問わずスタッフのモチベーション維持、部署全体のマネジメントと部署のパフォーマンス向上だと思う。
今年の12月は幸いにも我が外科病棟は退職希望者はゼロだった。
退職希望者が多かったのはICU(集中治療室)だ。
12月に退職3人では1月以降のシフトが組めるわけがない。
集中治療室では患者さん2名につき看護師が1名必要とされているが、
実際は患者さん1名につき2名の間違いじゃないかと思う。
人工呼吸器やECMO(エクモ :体外式膜型人工肺 )を装着している患者さんには継続的な観察や、看護ケアに時間がかかる。

重症肺炎の患者さんには腹臥位療法と言って、1日15分から30分間患者さんをうつ伏せにする治療法をおこなう。人工呼吸器を付けた状態でうつ伏せにするのだから人手は5~6人必要だ。
勿論看護師だけでおこなわず、医師やリハビリスタッフと共に実施するが、うつ伏せにした後の観察は看護師の重要な役目だ。体力も使うが神経も使う。
患者さんの呼吸状態や僅かな表情も見逃せない。

12月にICUを退職する奈美はICUひと筋の30代後半の看護師だ。
もともと5年前外科病棟に中途採用されたが、ICU経験があることから3カ月もせずICUに異動になったスタッフだった。
「体力の限界・・」(有名な力士のセリフだけど、若い人には通じないか)
と奈美はため息をつきながら言った。
「少しゆっくりしようと思ってます。先月夜勤7回ですよ。」
使命感だけでは続けられない現実的な問題が体力と精神力だ。

「奈美さん、外科病棟なら続けられない?前頑張ってくれてたの知ってるから残ってほしいわ。」
「次々に入ってくる救急患者さんのために、重症でも一般病棟に移動させなくてはいけないし。体力も精神力も限界ですよ。環境を変えたいんです。」
この“環境を変えたい”に師長は弱い。
退職の意思が強いことがわかる。

結局ICUの1月の勤務は、他の病棟から応援体制をとることで窮地を凌ぐことになった。
院長や看護部長はICU看護師長のマネジメント力にフォーカスしていたが、それだけではない。

事実、現場の問題より“病院の体制”で退職する看護師は多いのだ。  MIKO

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