施設基準だった図書室
かつて病院の機能評価基準(第三者が病院の機能を評価すること)に院内に図書室の設置と司書の配置が要件だった頃がある。質の高い医療サービスの提供のためには、医療の情報が重要であり、情報を得るためには専門誌が必要と考えられていた。
専門誌の需要
機能評価の対象外になったのは当然だ。
今は専門誌よりもネットの時代で、世界中の文献が検索すれば閲覧できる。
専門誌に記載されている記事もネットで検索すれば簡単に調べることができる。
若年層の本離れも深刻で、専門誌を年間購読しても熟読するのはほんのわずかの職員。
手術や内視鏡(胃カメラなど)の技術に関しても研修医や若手医師が参考にするのは
ユーチューブやライブ配信講義だ。
専任の司書さんもかつては本の貸し借りや整理に忙しかったが、
ここ数年は司書業務以外の仕事が増えている。
ネットカフェ図書室
図書室を利用する病院の職員は
本を探すよりも奥に並んだパソコン目的が多い。
医局や各病棟にもパソコンはあるが数が少ない。
スマホは医療機器に影響するから病棟では使えない。
中には図書室のパソコンを独占して病棟に戻らない医師もいる。
古い専門誌
医療に関する情報はまさに日進月歩で、過去の情報を参考にしてしまうと痛い目に合う。
看護師専門誌が2年前のバックナンバーから棚に収められているが、よほど保存版でない限り参考にならない。
図書室には外科部長が捨てきれずに家から持ってきた30年前の医学全集がある。
図書室に入ってすぐの下段にズラリと並べられている。
2年前の専門誌が役に立たないこの時代に。
一冊の幅は約7センチ。
高さは30センチはあるだろう。
それが50冊。
古びた茶色の装丁に金色で文字が書いてある。
一番下の棚の理由は勿論「重い」からだ。
開業医の父親からプレゼントされたというそれはかなりのスペースを占めている。
家で保管できるはずがない。
「これ捨てないの?」
司書に聞いたことがある。
「外科部長が在職中は捨てれませんよ。」
「古紙の匂いはこのせいだと思うんだけど。」
「そうですか?気になりませんけど。大体無理やり収めてるんでその医学書、取り出せませんよ。ぎゅうぎゅうにはまっているんで。」
外科部長は定年まであと5年。1度でも誰かが借りてくれるだろうか? MIKO
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