乗り越えた純君
ヒヤヒヤのゴールデンウィークが過ぎて、新人男性看護師純君はご機嫌で働いている。
ゴールデンウィーク明け初日には
「ご迷惑をおかけしました。外科で頑張ります。来月の消化器外科のセミナー申し込みました。」
嬉しい限りだけど、そんなに飛ばさないで・・。
ゆっくりでいいから。
「友達とキャンプ行ったんですけど、皆同じなんです。で、皆頑張ろうぜって話になって。」
うう、いい友達だ。こんな時師長なんてほんとに無力。
3年目看護師の敦美
敦美が師長室にやってきた。
敦美は鹿児島県出身で、新人時代ホームシックで指導者の瑠美を悩ませた看護師だ。
「ゴールデンウィークって分岐点なんですよ。ほんとリアリティショックって言葉通り。」
3年目になると堂々としたものだ。
「純君良かったですよね。表情が明るいです。あとは院内に恋人ですかね。」
なかなかするどい事を言ってくる。
「私も新人時代は瑠美先輩に迷惑をかけました。」
確かに瑠美は敦美のことで指導者に向いていないと落ち込んだ時期もあった。
今では敦美も瑠美も外科病棟にはいなくてはならない存在になっている。
変わったのは敦美がゴリゴリの鹿児島弁ではなくなったこと。
いまだにイントネーションの違いで、すぐに九州出身とバレるらしいが。
退室しない理由
そんな敦美がなかなか師長室から退室しない。
もう終業の5時をとっくに過ぎている。
自分の子供ほどの看護師とたわいもない話も悪くない。
近くの新しいカフェの話、人事異動の話。
でもたわいのない話のあとに、ひっくり返るような話があった。
単なる序章だったか。
「師長、私結婚するんです。リハビリ科の高橋クンと。」
ひと呼吸おいて敦美が言った。
新人時代を支えてくれたのはリハビリの高橋クンとは知っていたが、まだ続いていたとは。高橋クンは敦美より1才上の理学療法士だ。
敦美、リハビリカンファレンスで高橋クン避けてなかった?
絶対別れたと思って気を遣ってたんですけど。
「この前の連休高橋クンと一緒に鹿児島帰って、そしたら急に決まって、10月結婚します。」
「それはおめでとう!高橋クンは大阪出身じゃなかった?どのあたりに住むとか決まってるの?」
それまでの態度とは180度違う態度で敦美は恥ずかしそうに、しかしテンポよく話し始めた。
式は10月神戸で、披露宴も大々的にしたい。
有休、夏休み、婚休合わせて2週間取りたい。
妊娠するまでは外科病棟で働きたい。
妊娠したら外来に異動希望、夜勤はできない。
育児休暇は2年、高橋クンも一緒に取りたい。
院内保育が充実しているなら育休は早く切り上げてもいい。
口を挟む間がなかった。
高橋クンと色々話し合ったことだろう。
今の若い子はここまで考えて結婚するんだね。感心。
院内のリハビリ科の子と結婚するなら当分離職はないな。
良かった。
素直に結婚報告そのものを喜べない自分も・・なんだかな・・。 MIKO
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