リハビリテーション技師 言語聴覚士②

言語聴覚士 聡子
リハビリテーション科は理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)に分けられる。もっと詳しく分類するならば臨床心理士や視覚に従事する技師もリハビリテーション技師に含まれる。
その中でひときわ力を持っている言語聴覚士聡子について話そう。

言語聴覚士とはSpeech-Language-Hearing Therapistのことで、略してSTさんと呼ばれることが多い。STが国家資格と認定されたのは1997年で比較的新しい資格だ。言語や聴覚、構音、摂食、嚥下などの障害に対して、検査と評価を実施し必要に応じて訓練や指導、支援などを行う超高齢化社会に必須な専門職である。

聡子は1998年に国家試験を受けた草分け的存在のSTだ。嚥下評価について聡子に異論する者はいない。地域の医療業界でも名を馳せていて、学会や近隣病院向けのセミナーも率先しておこなっている。
STを目指した理由は、
「中学生の頃、入院したおばあちゃんがごはんを食べられなくなって、胃ろうを作ったことに疑問を覚えた。」という生粋のSTだ。大学で心理学を学び、どうしても嚥下や摂食について学びたいと言語聴覚士を学べる専門学校へバイトをしながら進学した。独身、彼氏なし。彼氏なしは誰も確かめていないが、おそらく、絶対彼氏なし。

聡子のリハビリ
誤嚥性肺炎(嚥下障害が元で肺に異物が入り込み炎症に至ること)で入院した患者も、聡子が担当すると嚥下機能を取り戻して退院していく。
勿論リハビリ内容や、一日のスケジューリングは厳しいの一言に尽きる。
リハビリの時間は限られているため、その他の時間にいかにリハビリ内容を取り入れるかが回復のキーポイントでもある。
聡子が担当する患者は、徹底した回復プログラムを遵守しなければいけない。
ベッドの角度、枕の高さと顎の位置、食事前の発生練習、食事内容の説明、その他諸々。

多職種カンファレンスで一度外科看護師の主任がキレたことがある。
「看護師は他のこともたくさんケアするんです。聡子さんのプログラムを守れって・・、時間がどれだけあっても足りません!」
その時、聡子は数秒沈黙した後、
「患者さんは誤嚥性肺炎です。回復させたいんですか?抗生剤で対処療法でいいとお考えですか?」
「私のプログラムは患者さんに合わせて効果的な方法を考えています。実施時間はわずか数分です。STは昼食時くらいしか介入できない。その他の時間を有効に使うには、看護師さんや看護助手さんの協力が必要なんです。協力をお願いします。」
と涙を浮かべながらナースステーションで聡子が静かに放った。
主任は30代半ば、聡子は50歳前だ。
深々と頭を下げ、聡子はナースステーションを去った。

「正論だと思うよ、協力しよう。」
「確かに聡子さんが受け持った患者さん、嚥下機能取り戻して退院するよね。」
「助手さんにも研修しようか?」
こうして聡子のプログラムは絶対のものになった。

こんな熱い技師さんが存在するおかげで、超高齢化社会の医療は乗り切れる。
嚥下機能障害から誤嚥性肺炎をおこせば、短絡的に血管から栄養や、胃ろうを造って栄養補給は最終的な判断にすべきだ。そしてそれが患者さん自身が望んだ生き方か考えなければいけない。  MIKO

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