リハビリテーション技師 作業療法士③

ポジショニング命 ツヨシ
リハビリテーション技師の中で作業療法士(occupational therapist 略してOT)は、日常生活をスムーズに送るための応用的動作のリハビリテーションをおこない援助する仕事だ。応用動作とは「食事をする」「顔を洗う」「料理をする」「字を書く」等の生活する上で基本的な動作の事を言う。
作業療法士は指の細かい動作や手の動きなどのリハビリテーションを行うことが多く、日常動作をより具体的に支援する。

ツヨシは作業療法士歴10年目のベテランで作業療法士の主任だ。リスクの高い、臥床状態(寝たきり、と表現される)の患者を受け持つことが多い。ツヨシが特に気を付けているのがポジショニングと手の動きだ。臥床状態の患者を褥瘡を作らずにいかに心地よく、四肢の機能を活かせるポジショニングに関してはめちゃくちゃうるさい。ツヨシはあらゆるクッションを使ってポジショニングをおこなうから、受け持つ患者数によってクッションがすぐに足りなくなる。理学療法士がリハビリした後にクッションの使い方を間違えると特に厳しく注意する。
「あーダメダメ。体が垂直ですよ。患者さんにとって苦痛と思いませんか?」
と熱く語る。しかし言うだけあってツヨシがリハビリした後の患者は皆、”気持よさそう”に見える。

「誤嚥性肺炎ですよね。去痰しやすいポジショニングと、腸骨が出てますので保護目的でクッション使います。抱き枕はこの位置がベストです。」とアセスメントし、理由を明確に実践する。
臥床状態の患者へも手のマッサージと運動は欠かさない。
「この患者さんに効果あるの?」とツヨシに聞いた事がある。
「手のマッサージや手浴はリラクゼーション効果があって、脳活性化には一番なんです。このかんじゃさん時々握り返すようになりましたよ。」そう語るツヨシの背中に羽が生えているように見える。

部屋のポジショニングが出来ないツヨシ
あれほど細かくポジショニングにうるさいツヨシだが、作業療法士の部屋は院内でも有名になるほど乱雑で整理整頓されていない。医療安全のラウンドで‟もっとも5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾の頭文字をとった用語で、安全や作業効率アップにつながる習慣)ができていない部署”に数年連続選ばれている。本は山積み、書類はかき分けて探すのが日常だ。主任が片付けられないから部下も全員片付けできない。
「ミニマリストみたいなイライラしてる片付け魔よりラクっすよ。」
と部下は言うが、まるで体育会系の部室だ。
清掃業者さんが言う。
「あの部屋だけは手がつけられない。ゴミ箱に入っていた本を捨てたでしょ、って言われて困りましたから。捨てたんじゃない置いてたんだ、なんてひどすぎますよ。」
この1件以来清掃業者さんは作業療法士の部屋だけ清掃拒否した。

身の周りのポジショニングもできたら、きっとモテるよツヨシ。  MIKO

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