病院の施設管理課

昔営繕、今施設管理
家に連れて帰りたい部署のひとつに施設管理課がある。
病院の大きな酸素のシステムや、非常用電源(これ病院では大事、停電時に人工呼吸器とか使えないと生命維持に関わる)担当の施設管理職員も尊敬に値するが、備品担当職員が一家に一人いれば重宝すると思う。私は彼らを備品ドクターと呼んでいる。

少し前は彼らは「営繕さん」と呼ばれていた。物を造る「営造」と「修繕」をくっつけた言葉だ。
今は営繕は通じない、営繕という言葉を使うのはたいてい40オーバーの職員。
若い看護師は、
「エイゼンって何語ですか?」
と言う。

なんでも直す、とにかく直す
病院の備品はとにかく壊れる。点滴を吊るす支柱台、車椅子、ストレッチャーの不具合にはじまり、壁の損壊や病室の床頭台(テレビが付いている台)の引き出しが開かないなど、施設管理課のPHS(院内で使われる個人用電話)は鳴りっぱなしだ。

看護師3人がかりでトライしても開かなかった床頭台の引き出しが、施設管理課の手にかかると秒で開く。
「入院のしおりが引っかかってたんですよ。普通に開けないで、こんな風に引き出しを下向きにして・・。」
「へー。」
感心して聞いていたが、まったく意味がわからなかった。

浴室のタイルが割れたことがあった。
入浴用のストレッチャーをぶつけた時に割れたらしい。
「強くぶつけてないんです、ほんのちょっとぶつかっただけで割れたんです。」
「経年劣化です。」
この経年劣化という言葉を看護師はよく使う。

浴室のタイルを見てみると、ほんのちょっとぶつけたのではないことは明らかだ。
「患者さんは大丈夫だったの?浴室掃除は タイルの破片に 気を付けてね。施設管理課に修理を頼んでおくわ。」

他部署に依頼事をする時は管理者から管理者へ依頼するのが原則だ。
私は施設管理課長へ浴室タイルの破損修理を依頼した。
「わかりました。すぐ見に行かせますね。」

電話を切って浴室に行った時にはもう施設管理課の職員がいた。
「かなり強くぶつけてますね。ほら、ここまで亀裂が入ってるでしょ。ここからカーブしてストレッチャーの角をこうやってぶつけたんです。」

施設管理課は鑑識もできる。
「近所のホームセンターで補修材調達しますね、そのホームセンターの別館で見かけたことあるんで。」

施設管理課はホームセンターの売り場情報も把握している。
その2時間後、浴室は完璧に修理されていた。
見た目、どこが破損していたのかわからないほどだ。

「ありがとうございます。経年劣化も関係ありますよね?」
「いや、破損の8割は雑な扱いですよ。経年劣化は2割。」
・・だそうです。

営繕さん、いつも匠の技をありがとう。
私的にはスポットライトを当てたい部署です。  MIKO
 



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