自立できない医師②

スマホを持たない医師
「顎で人を使う」この言葉は淳一先生のためにある言葉だ。皮膚科、形成の淳一先生は40代前半。とにかくITが苦手だ。高齢者だってスマホを扱う時代なのに、カルテ入力が普通の医師の3倍以上時間がかかる。カルテだけでなく、スマホはロック解除方法を忘れたと放置してあり普段は使わない。ラインやメールではなく「電話」や「手紙(学会などのお知らせ)」を好んでいる。実に珍しいタイプの医師だ。よくスマホを机に置きっぱなしにしているが「何の情報も入っていないから盗られても平気。」だそうだ。かなり旧式のスマホだから盗まれはしないだろう。

忘れ物も多い
淳一先生はよく忘れものをする。外来でも必ず何か忘れる。
「悪いけど医局から〇〇持ってきて。」
「外科病棟から〇〇持ってきて。」
とにかく自立できていない。
この程度のことは許せる。実際「なんか頼み方が可愛くないですか?」と贔屓の看護師もいるほどだ。
「奥さん大変だろうね。」と同情の声も聞こえるが、実は淳一先生は最近離婚している。原因は誰も知らないし、離婚していることはシークレットのままだ。
それも個人の問題なので関係ない。

どうにかならない?その遅さ
関係あるのは強烈なカルテ入力の遅さだ。
外来では1時間に4枠、ひとりの患者を15分診察と想定して組まれている。
淳一先生の枠はひとり患者30分、ひどい時にはひとり1時間を押さえている。しかしそれは患者さんのためにもそれがよかろう。なにせキーボード入力が遅い。時々「入力文字がおかしくなった。」とシステム科を呼んでいる。文字入力変換くらい小学生でもわかるかもしれない。

指2本でカルテを打つ
左右の人差し指2本でキーを探しながら打つ姿は、入職して5年経っても変わらない。いい加減慣れそうなものなんだけどね。
「先生、テンプレート使ったらどうですか?」
「検査データはここを押すとそのまま貼付されます。」とカルテ操作すべてにおいて介助が必要なのだ。少し口出ししすぎると、
「うるさいから間違えたじゃないか!」とゴネるから加減が難しい。

外来診察コーディネーター
そんな淳一先生に専属のコーディネーター(医師補助)が付いた。部長にも専属コーディネーターは付いていないのに特別待遇だ。
「電子カルテが使いにくいから打てない。」とゴネたらしい。

それからというもの、淳一先生の診察室にはコーディネーターがつき1から10まで入力操作、紹介状に至るまで代行するようになった。

淳一先生の愚痴
コーディネーターさんは凄い!これまで1時間に患者さんひとりしか診れなかった淳一先生外来が驚異のスピードと化した。数カ月前と比較して1時間に4人枠いっぱい埋まっている。
すべてに於いてコーディネーターさんが手助けしているから、先生自体は全く進歩していない。

「何から何までやってくれるのはいいんだけどさ、めちゃ外来患者数が多くなったわけよ。入院患者もその時間で診るし。速すぎるのも考えもんだね。」最近の淳一先生の愚痴だ。  MIKO

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